1 餓鬼が笑う 闇のなか、一本の蝋燭の灯が揺れる。「深淵の闇。そこは人間が行き着く最後の未来。何者にもなれなかった男の人生が今終わろうとしている…」―男の名は、大貫大。事業に失敗した父親が二年前、首をくくって以来、彼は骨董商を目指し路上販売を続けている。大の露店で、幼い少女がビー玉の値段を尋ねる。大は答える。「これは百年前に作られたビー玉なんだ。想像できるかな。一個だけあげるから、その代わり大きくなったらお兄ちゃんのお嫁さんになって」少女はもらったビー玉を持って、無言のまま駆け去る。 ¥330 2 レンタル×ファミリー 子どものために父親を“レンタル”するシングルマザー。束の間の幸せを得る人、金で買える幸せにやがて依存していく人、そして“父親”が実は雇われていた他人だったということを知った子どもーー。家族の在り方も、幸せの価値も多種多様な現代社会で生まれた実在のサービス【人間レンタル屋】 。時代のニーズに応え人の幸せを願い、仕事に真摯に向き合おうとする主人公とサービスにまつわる3つの家族の物語が生々しく綴られる。彼らがたどりついた結末とは… ¥440 3 道で拾った女 春日部竜平はトラック運転手。年中トラックに乗って全国を走り回っている。あるとき公園に立ち寄ると「助けて!」と女性の叫び声が聞こえてくる。近寄ってみると草むらで髪の長い女性がホームレス男3人にレイプされそうになっていた。竜平は勇気を振り絞ってホームレスを追い払い、女性を助け起こそうとすると女はその手を振り払って「さっき見てたでしょ、なんですぐ助けなかったの」と竜平をにらみつけ、フラフラと歩きだす。その姿から察するに女もホームレス生活を送っていたようだ。竜平は再び女に声をかけた。 ¥440 4 あいたくて あいたくて あいたくて 一年前に夫を亡くした淳子は夫の残したタイ料理屋を一人で切り盛りしていた。ある日淳子は店に置くハンドメイドのテーブルを通信販売で購入する。 送られてきたテーブルは素朴で素敵な作りをしていたが、オマケで送られてきた人形の首が取れていた。気遣いのつもりで淳子がメールすると家具職人の祐司から送りなおすと返事がくる。 そもそも不必要なものが壊れて送られてきたことに納得のいかない淳子は「親切の押し売りはやめて、あなたは宮沢賢治の『ツェねずみ』のねずみにそっくりです」と再度返信。 そこから二人の会話が始まった…。夫との死別から立ち直ろうとする淳子と生真面目すぎるバツイチ男・裕司の心の交流が観る者の心を温かくする。人生の半ばを過ぎた大人たちに訪れた優しいラブストーリー。 ¥440 除外キーワードで絞り込む を除く