1 挽歌 北海道、最果ての港釧路。霧の深いその街を、兵頭怜子(久我美子)は右手で関節炎を患って以来硬直してしまった左肘を抱え、ゆっくりと歩いている。父(斎藤達雄)は、そういう娘を不憫に思って何回となく縁談をもってくるが耳を傾けない。その孤独な怜子の唯一の救いは、アマチュア劇団みみずく座の美術部員としての仕事である。幼馴染の久田幹夫(石浜朗)も同じ部員で、お互いに心の通じ合うのを感じているが、怜子の心の空虚は、彼によっても満たされはしない。怜子は、ふとしたことで、中年の建築技師桂木節夫(森雅之)と知るようになった。 ¥330 2 猟銃 彩子(山本富士子)は芦屋に住んでおり、夫の門田礼一郎(佐田啓二)は、学位をとるために京都の大学の内科で研究中だった。ある日、少女を連れた若い女が彩子に面会を求めてきた。「私が産んだこの子、門田さんの子」というなり少女を置いて去ってしまった。彩子は離婚を決意したが、入婿の礼一郎は「君の気持ちが直るまでいつまでも待つ」と言った。少女・薔子(鰐淵晴子)を彩子が育てることになったある日、従妹みどり(岡田茉莉子)の夫・三杉穰介(佐分利信)が訪れてきた。彼はみどりと愛情のない形だけの生活を送っていた。 ¥330 3 黄色いからす 吉田一郎(伊藤雄之助)が十五年ぶり中国から戻った時、妻マチ子(淡島千景)は鎌倉彫の手内職で息子清(設楽幸嗣)と細々暮らしていた。博古堂の女経営者松本雪子(田中絹代)は隣家のよしみ以上に何かと好意を示していたが、雪子の養女春子(安村まさ子)と清は大の仲良し。一郎は以前の勤務先南陽商事に戻り、かつて後輩だった課長秋月(多々良純)の下で、戦前とまるで変わった仕事内容を覚えようと必死。清は甘えたくも取りつくしまがない。一年が過ぎ、吉田家には赤ん坊が生まれ光子と名付けられたが、清は一郎の愛情が移ったのに不満。 ¥330 除外キーワードで絞り込む を除く