1 MARS RED ちょいと旦那、ヴァンパイアってやつをご存知で? そう、人の生き血をすすり、夜の帳に生きる化け物さ。 おっと、コウモリに化けるってのは小説の与太話ってやつでね。 本当のヴァンパイアってやつは姿形を変えることなんざ、しやしない。 それどころか、彼らは弱い。 太陽の光を浴びれば焼かれて灰になっちまう。 犬より敏感な聴覚と嗅覚は文明開花の喧騒に耐えられない。 そして水に溺れて死んじまう。 でも連中が一番怯えちまっているものがなにか知ってるかい? 戸籍さ。 戸籍のせいで、永遠に年を取ることのないヴァンパイアは、 ひとつところに留まることを許されない。 悪い噂でも立てば、昼間のうちに踏み込まれ、 あっという間にお天道様の下に連れ出されて灰にされちまう。 一巻の終わりってやつさ。 ……かわいそうな連中なんだよ、ヴァンパイアはさ。 元は普通の人間だ。 懸命に人間らしく生きようとしてる。 だから少しばかりそいつらの手助けをしてやってもいいんじゃないかな? 陸軍に零機関ってヴァンパイアの部隊がある。 あの兄さんたちなら、ヴァンパイアを人間らしく扱ってくれるんじゃないかな? なんでこんなことを知ってるかって? この天満屋慎 ¥330 無料あり 除外キーワードで絞り込む を除く