1 金語楼の子宝騒動 とある銀行の小使・泉山金太郎には戦時中のベビーブームに乗って貧乏ながら十二人の子と三人の孫がいた。妻・おみよは毎日の配給に悩みながらも子供の成長を楽しみに家にじっとしているばかり。貧しい生活は一家の性格を歪め、さかえは本屋で辞典を万引きし、十三子は下品な流行歌を歌い先生に叱られる始末。金太郎も嫌気が差して銀行を退職し、その退職金でアイスキャンデー屋を始めた。ある日空き地で野球をしている長男・一郎を見つけ、聞くと会社が倒産し職を探しているという。こうした悲劇の連続に金太郎は思わずムシャクシャして戦時中に貰った子宝家族の表彰状と記念写真を破ってしまう。 ¥330 2 憧れのハワイ航路 岡田秋夫と山口五郎は同じ学校の出身で、今でも「うきよ」という小さな飲み屋の二階に一緒に下宿していた。二人とも貧乏暮らしで、岡田は夜間中学の英語教師で、山口は画を描いているが、何かにつけて助け合っていた。岡田は音楽に関心を持って暇さえあれば歌を歌っていたが、そんな彼はハワイで生まれて、母が死んでから父を残して日本の学校で青少年時代を過ごしたが、戦争のため父親の消息はわからなくなり、その面影を懐かしみながら、ハワイ時代の思い出に浸っていた。「うきよ」の女将・みきは初婚に失敗し、二人の子供を残して家出をし、現在の亭主・松吉と連れ添っていた。みきが子どものことを忘れられずにいると、偶然に岡田が花売りの娘を救う。その娘・君子こそみきの子どもであった・・・。 ¥330 除外キーワードで絞り込む を除く