1 本日休診 戦争で一人息子を失った三雲医院の八春先生(柳永二郎)は甥の伍助(増田順二)を院長に迎え、戦後再出発してから丸一年の記念日、伍助はこの日看護婦の瀧さん(岸惠子)たちと温泉へ出かけて行き、三雲医院は「本日休診」の札を掲げた。八春先生はこの機会にゆっくり昼寝でもと思っていた矢先、婆やのお京(長岡輝子)の息子勇作(三國連太郎)が例の発作を起こしたという。勇作は永い軍隊生活の悪夢にまだ折々なやまされ、八春先生はそのたびに部隊長となって号令、部下の気を鎮めてやらなければならぬ。 ¥330 2 てんやわんや 宇和島市を題材にした『大番』と同じく愛媛県南予地方の人情、文化、方言などを詳しく知ることができ、この地方特有の「牛の突き合い」(闘牛)、「牛鬼」(お祭りの練り物)岩松川の大うなぎ(愛媛県の天然記念物)とっぽ話(ホラ話)や戦後すぐにおこった「南海大地震」などが興味深く紹介されている。主人公犬丸順吉(佐野周二)は、戦犯の容疑を恐れ、師事していた代議士鬼塚の郷里「相生町」(津島町がモデル)に疎開する。彼は鬼塚の紹介で「相生長者」の家に食客として住み着き、彼や彼の知人から厚遇される。饅頭食いの越智善助、うなぎ取りの名人田鍋拙雲、謄写版恋文三割歩留り多賀谷青年など、ユニークな人物が多く登場することで、戦後の荒廃した東京と、のんびりとした「相生町」の好対照が見事に描かれている。 ¥330 3 酔っぱらい天国 日本鋼材の会計課長渥美耕三は十年前に妻を亡くし、一人息子の史郎との二人暮し。二人とも大変な大酒のみである。耕三は近所に住む長谷川きみが、夫の清の酒のことで相談にくると、「酒は静かにのむべきだ」と説教するが、彼自身はのむとがらりと人が変ってしまう。先日も、のみ友達であるトップ屋くずれの小池と二人で泥酔、酔っぱらい保護センターに保護される仕末だ。ある日、史郎は突然結婚すると言い出した。相手は看護婦をしている桜井規子だと言う。史郎はどうしても結婚したいため赤ん坊ができていると嘘まで言った。その一言に耕三は渋々、規子に会った。喜んだ史郎は友人の森山とのみ歩いた。森山はバー、ベンハーの女給節子に惚れていた。 ¥330 4 好人好日 奈良の大学の数学教授である尾関は、数学にかけては世界的な学者だが、数学以外のことは全く無関心で、奇行奇癖が多く世間では変人で通っている。妻の節子はこんな尾関につれ添って30年。愚痴りながらも彼を尊敬し、貧乏世帯をやりくりしてきた。娘の登紀子は市役所に勤めていて、同じ職場の佐竹竜二と縁談がある。二人は好きあっているし節子もこの縁談を喜んでいる。ただ竜二の家は飛鳥堂という墨屋の老舗で、竜二の姉美津子はお徳婆さまに気に入るように色々と格式にこだわるのだ。それに登紀子は両親の顔を知らない戦災孤児で、尾関に拾われ今日まで実の娘と同様に育てられてきたのだった。 ¥330 除外キーワードで絞り込む を除く