1 金語楼の子宝騒動 とある銀行の小使・泉山金太郎には戦時中のベビーブームに乗って貧乏ながら十二人の子と三人の孫がいた。妻・おみよは毎日の配給に悩みながらも子供の成長を楽しみに家にじっとしているばかり。貧しい生活は一家の性格を歪め、さかえは本屋で辞典を万引きし、十三子は下品な流行歌を歌い先生に叱られる始末。金太郎も嫌気が差して銀行を退職し、その退職金でアイスキャンデー屋を始めた。ある日空き地で野球をしている長男・一郎を見つけ、聞くと会社が倒産し職を探しているという。こうした悲劇の連続に金太郎は思わずムシャクシャして戦時中に貰った子宝家族の表彰状と記念写真を破ってしまう。 ¥330 2 夜来香 終戦間際の難民で溢れかえる華北の町で、軍医の関三郎は矢吹秋子と出会った。二人は一目会った時から恋し合う仲となり、夢のような夜来香の香気に包まれながら幸せな夜を過ごす。だが所詮戦地での儚い恋であり、残酷にも二人の愛は引き裂かれることとなった。五年後、関は神戸の製薬会社に勤めていた。やがて関はかつて戦地で負った傷が原因で眼が見えなくなってしまう。失明を待つばかりとなり、いよいよ秋子への想いが掻き立てられていた。すると運命的な一夜が訪れる。街のとあるレストランでついに関と秋子は再開するのであった・・・。 ¥330 3 人間模様 禁制のキャバレーに女性秘書の吉野吟子を連れて行った七曜デパートの社長・小松原厚は、警官に捕まって警察に連行された。小松原は、一番確実な身元引受人として、学友だった大輪高等学校校長の息子・大輪絹彦を夜中に呼び出した。善良そのものの絹彦のおかげで二人はすぐに釈放されたが、小松原は別に礼も言わなかった。しかし、絹彦も何でもないような顔をしていた。そんな絹彦を見て、吉野吟子は何となく好ましく思っていた。ある日、絹彦がレンブラントの額を持って吟子のアパートを訪れてくる・・・。 ¥330 4 果てしなき情熱 引揚者の三木太郎は天涯孤独の作曲家で、薄汚いアパートの部屋と三文キャバレーだけが彼の世界であった。キャバレーの歌手・福子と給仕のしんはひそかに三木に恋心を抱いていたが、三木には小田切優子という信州の片田舎で出会った忘れられない人がいた。気持ちを紛らわすため酒に酔っていた三木は、道端で突然女の悲鳴を聞く。短刀を片手にした暴漢が女に迫っていたのだ。その様子を見て三木はびっくりした。その女とは、あの優子だったのだ・・・。 ¥330 除外キーワードで絞り込む を除く