ドラフト2020直前特集
83人のプロ選手を発掘したPL学園伝説のスカウト・井元俊秀がドラフトの記憶を語る
井元氏が考える、プロへの切符をつかむ選手に共通する3つの特長とは
プロ野球選手になれる選手の特長は「正しいキャッチボールが出来ていること」「足が速いこと」「話し方が理路整然としていること」の3つです。
順番に説明すると、まずキャッチボールは野球の基本で、キャッチボールがいいというのはスローイングがいいということです。悪いクセがついたスローイングはなかなか直らないものです。広岡達朗さんはまずキャッチボールを教えたし、故・根本陸夫さんは午前中いっぱい使ってキャッチボールの練習をしていたものです。
次に、足が速いというのは、足ってトレーニングなどで速くなるものじゃないんです。ピッチャーだったら多少足が遅くてもいいかもしれませんが、野手で足が遅いのは致命的になってしまいます。
最後に、話し方が理路整然としているというのは、本人のなかで野球理論がしっかりしているということです。王貞治さんは他の選手が感覚的にプレーしていたあの時代に、とてもしっかりしたバッティング理論を持っていましたよ。
あの名選手のドラフト時の記憶~清原和博~
プロ野球のドラフトには、江川卓の空白の一日など、かつては抜け穴がありました。巨人のKKドラフト事件はその延長にあったんじゃないでしょうか。現在のプロ野球志望届があったら絶対に起きないことでした。清原くんも桑田くんも、プロ野球が発展していく時代で、人生を振り回されたんだと思っています。
清原くんは中学生のときから見てきましたが、明るくて正直で素直な性格という印象でした。野球選手としても素晴らしい才能の持ち主で、初めて練習を見たときの衝撃は今も覚えています。フリーバッティングではどこまで飛んでいくのかという飛距離で、恐ろしいくらいの打球のスピード、あんな選手は初めて見ました。プロ入りしてからは、追い込まれるとチームが勝つためのバッティングを考えなくてはいけなかった。本塁打王が獲れなかったのは、チームバッティングに徹したからじゃないでしょうか?タイトルを獲った打者はみんな追い込まれても本塁打を狙っていましたから。
あの名選手のドラフトの記憶〜今江敏晃・今岡誠〜
中学生のときに見た今江敏晃くんが印象に残っています。とにかく泥まみれになって練習して、ユニフォームは真っ黒。守備では身体をぶつけながらゴロを捕り、バッティングではボールを引きつけて思いっきり振るタイプでした。スマートさはありませんでしたが、がむしゃらに練習する姿はキラリと光るものがありました。
今江くんの47期は後に近鉄に入団する朝井くん、阪神に入団する桜井くんがいて、立浪くん、片岡くん、野村くんらがいた33期や、桑田くん、清原くんがいた31期に匹敵する強さでした。ところが最後の夏は不祥事で甲子園出場を辞退することになり、本当にがっかりしていました。その姿は今も忘れられません。明るくてとてもいいキャプテンだったので、今は楽天の育成コーチですが、いいコーチになると思います。
もう一人、プロ入りではなく進学をすすめた今岡誠くんも印象的です。本人はプロ入りを希望していましたが、身体が出来ていなかったので、無理だと決断しました。東洋大で花開き、その後阪神での活躍はみなさんがご存じのとおりです。
これからプロへ進む選手へ期待すること
最近のプロ野球は昔とは変わりました。昔の選手はトレーニングやプレーが感覚的で、いいプレーをしていれば私生活はあまり注意されませんでした。試合に勝てさえすれば門限は破るし朝まで帰って来ないし…という時代ですよ。でも今は科学的な根拠に基づいてトレーニングするし、プレーだけでなく私生活でも世の中のお手本にならなくては。模範となるような行動は忘れずに、プレー面では個性を出すことを忘れないでほしいですね。
10月26日、運命の一日。今年のドラフトでは桑田真澄、清原和博らを超える逸材が現れるだろうか。
指名された選手たちに、どんなドラマが待ち受けているだろうか。
プロフィール
井元俊秀
PL学園硬式野球部創設者で1期生。卒業後は学習院大学に進学し、硬式野球部の投手として活躍。東都リーグ初優勝に貢献した。大学卒業後はPL学園硬式野球部の監督に就任し、センバツ・夏の甲子園へ初出場を果たす。その後、スポーツニッポン新聞社に入社。退社後は母校であるPL学園の宣教師として各地の教会を巡りながらスカウト活動を行い、桑田真澄や清原和博をはじめとした数々の名選手をスカウトした。PL学園硬式野球部の黄金時代を築いた功労者。
取材・文:ウィルメディア編集部
@WillmediaS
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