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なつやすみの巨匠

G

それは誰もが通った道――淡い初恋、自我の目覚め、友情の亀裂、ほろ苦い別れ。

能古島に住む小学4年生、シュン。
夏休み、ヒマを持て余していたシュンはかつて映画研究部員だった父・和由から古びたビデオカメラを譲り受ける。武骨なデザインが気に入ったシュンはすっかりカメラの虜に。
もともと父の影響で80~90年代のハリウッド映画が大好きだったシュンは、親友たちと共に映画撮影の真似事に熱中するのだった。しかし周囲には野暮ったい連中ばかりでどうにも画にならない。ある日、島在住のうるさい画伯ジジイ・智滋が一人の少女を連れて島へ戻ってくる。
亜麻色の髪。鳶色の瞳。どこから見ても映画に出てくるような外人そのものだった。
少女の名はユイ。ブラジル人の父と日本人の母を持つハーフで、生まれも育ちも福岡。日本語しか喋れない。訳あって夏休みの間だけ、祖父の智滋に預けられたのだった。
シュンは智滋の家からユイを強引に連れ出す。
そしてこれが一目惚れであることがバレないよう、もっともらしく言うのだった。
「俺、監督やけん。お前ばスカウトしたと。分かるや?――お前ば、女優にしちゃる!」
「はぁ?バカやないと?」
シュンとユイの奇妙な関係が始まった――。

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